堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 そして次の日。
 今日も知的美人な婚約者に変装したエレオノーラ。しかし、超病弱という設定があるため、儚げな知的美人というところを目指してみた。

「では、エレオノーラ嬢をお預かりします」
 ジルベルトのそれに、フランシア子爵夫人はニコニコと笑みを浮かべていた。フランシア子爵家の屋敷から王城までは、馬車で向かうことになっている。
 だからジルベルトはエレオノーラと二人、馬車の中。よくよく考えてみたら、こうやって二人きりで話をするのは、彼がエレオノーラに求婚した時にフランシア子爵家の屋敷を訪れた時以来ではないだろうか。とジルベルトはしんみりと考えていた。

「こうやって、二人きりになるのは、変な感じがしますね」
 ジルベルトの心を読んだのだろうか。エレオノーラがそう口を開いた。

「そう言われると。あまり二人で何かをする、という機会はなかったかもしれないな」
 心の中を見透かされないようにと、ジルベルトは腕を組んだ。
 恐らく、その「機会」というものを思い出しているのだろう。あまりにも真面目な表情に、エレオノーラはちょっと笑みをこぼした。
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