堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「あの、ごめんなさい」
 ジルベルトの腕の中でさらに耳の付け根まで赤く染め上げるエレオノーラ。

「いや。問題ない。怪我はないか?」

「あ、はい。おかげさまで、どこも」

「そうか」

 言いながらもエレオノーラはジルベルトの腕の中。

「あの」
 エレオノーラは顔を上げた。そこには難しい表情をしているジルベルトの顔がある。

「何か」

「恥ずかしいので、離していただいてもよろしいでしょうか」

 目が合った。こんな至近距離でジルベルトの顔を見るのは押し倒された時以来。よく見ると、ジルベルトの耳が赤く染まっているような気もする。

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