堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「ああ、すまない」
 ジルベルトは、エレオノーラおろすと自分の隣に座らせた。

「あの、リガウン団長」
 エレオノーラはジルベルトの名前さえも呼べない。それだけ役になりきれていない、ということだ。

「なんだ」
 というジルベルトの声が怖いように感じてしまうのは、婚約者をきちんと演じろ、という牽制のようにも聞こえるから。

「あの。陛下の前ではきちんと婚約者を演じますので。今だけは」
 エレオノーラは恥ずかしすぎて仮面をつけることができない。だから、両手で顔を覆うしかない。この顔はジルベルトにも見せることができない。

「エレン」

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