堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
ジルベルトは彼女の細い手首を掴んだ。
「無理して、その、婚約者を演じなくてもいい。そのままで問題ない」
彼は思わず彼女を抱きしめたくなる衝動に駆られた。心の奥底から沸き起こるわけのわからない気持ち。
「リガウン団長の前ではそれでいいかもしれませんが、陛下の前ではダメです。せっかく団長の婚約者になったのですから、婚約者らしく振舞わせてください。ですが、今は、少々お待ちを」
エレオノーラは口から息を吸った。そしてそれを胸いっぱいに広げてから、ゆっくりと吐き出す。
馬車が止まった。
「エレン。着いたが、大丈夫か」
「はい、大丈夫です」
そう言って、顔を上げたエレオノーラの表情は、先ほどまでの愛らしい顔とは違っていた。
この顔も嫌いではない。この表情もエレオノーラのものだから。でも、欲を言えば先ほどまでの可愛らしい彼女のほうが好みかもしれない。だけど、エレオノーラがエレオノーラであればどれでもいい、という本音もちらりとある。いろんな彼女が楽しめるというのは、ある意味、贅沢なのではないだろうか。とか考えているジルベルトは、すっかりエレオノーラの魅力にやられていることに、彼自身気付いていない。
「無理して、その、婚約者を演じなくてもいい。そのままで問題ない」
彼は思わず彼女を抱きしめたくなる衝動に駆られた。心の奥底から沸き起こるわけのわからない気持ち。
「リガウン団長の前ではそれでいいかもしれませんが、陛下の前ではダメです。せっかく団長の婚約者になったのですから、婚約者らしく振舞わせてください。ですが、今は、少々お待ちを」
エレオノーラは口から息を吸った。そしてそれを胸いっぱいに広げてから、ゆっくりと吐き出す。
馬車が止まった。
「エレン。着いたが、大丈夫か」
「はい、大丈夫です」
そう言って、顔を上げたエレオノーラの表情は、先ほどまでの愛らしい顔とは違っていた。
この顔も嫌いではない。この表情もエレオノーラのものだから。でも、欲を言えば先ほどまでの可愛らしい彼女のほうが好みかもしれない。だけど、エレオノーラがエレオノーラであればどれでもいい、という本音もちらりとある。いろんな彼女が楽しめるというのは、ある意味、贅沢なのではないだろうか。とか考えているジルベルトは、すっかりエレオノーラの魅力にやられていることに、彼自身気付いていない。