花笑ふ、消え惑ふ
芹沢は暗くなってきた空を見上げると重たそうに腰をあげた。
「戻るとするか。土方よりうるさい男を儂は知らん」
「あはは……」
土方にこうも食ってかかれる男は芹沢だけである。
それにおそらく……土方の言うことは正しいから、みんな言葉を返せないんだろう。
山南はどうやらそれだけではないらしいと流は思っているが。
そう断言できるほど山南のことを知らない流は、そこで考えるのをやめた。
「そうだ。芹沢さんはどっちがいいですか?」
「なにがだ?」
「その、雲か石だったら……」
「ああ、そんなの決まっておろう」
流の質問に迷うことなく答えた芹沢は、ぽかんと立ち止まった流を振り返る。
夕暮れの橙に染まるその顔は、それを信じて疑わないという強さがにじみ出ていた。
土方にあれだけ食ってかかれるわけだ、と流はそのときやっと理解した。
────この人は、
自分の生き方に自信を持っている。