花笑ふ、消え惑ふ
腑抜けた呑兵衛
■
「げ」
「げ、とはなんじゃ。こうして二人で話すのは久方ぶりだというのに」
「芹沢さん、なんか最近…来る回数増えてねぇ?」
ふん、と鼻を鳴らした芹沢さんは見ないうちにまた一回り大きくなっているような気がした。
さっきまで酒を呷っていたばかりだから、きっとぷんぷん臭いがするだろう。
さりげなく半歩下がって、芹沢さんから距離を取ってから、ふと思い直す。
……いや、無理して話す必要はないじゃん。
このまま回れ右をして去ってやろう。
そう思って、身を翻しかけた瞬間だった。
「永倉。やはり、お前のことか」
「は?」
話しかけられると、どうにも無下にはできない。それをきっとこの人もわかってる。厭な人だ。
「花子が心配しておったぞ」
「花子?……ああ」
流のことか。
どういう経過はわからねぇが、芹沢さんには花子と紹介しているらしい。
ほんとに、どういう経過はわからねぇけど。