花笑ふ、消え惑ふ
「やっぱステゴロだと新ちゃんのが強いなぁ」
「左之さん!暢気なこと言ってないで止めろよっ!」
流よりすこし後れを取って、後方で平助と原田が隊士をかきわけている。
上背のある原田ならふたりを止められるのだろうか、と流は思った。
いや、ふたりは────総司と永倉は、もうそれぐらいでは止まらないほどに熱くなっている。
お互いのことしか見えていないような勢いに、流を含めた周りは圧倒されていた。
「トシ!」
誰かが土方の名前を呼んだ。
ここに来ているのか、と振り向こうとした流は。
すでに口から血を流している総司に、永倉が追い打ちをかけるように拳をふるおうとしているのを、視界の端で捉え────
気づいたら、ふたりの間に飛びだしていた。
ガッ──────!!
「っ!流!!」
頭の側面に鈍い痛みが走る。どれだけの力で殴ろうとしたのだろう、痛いというより熱かった。
たたらを踏んだ流はなんとか足を踏ん張る。