花笑ふ、消え惑ふ
夕餉を食べ終わったあと、流はあのふたりのことを考えていた。
言わずもがな、総司と永倉のことである。
────どうして喧嘩になったんだろう。
流が道場についたとき、ふたりはすでに言い合いなどしていなかった。
もうとっくに言葉は交わしたあとだったのだろう。
そのときなにを話していたのかは、当事者たちにしかわからない。
「……雲と石」
永倉は自分のことを石だと言った。
そう話してくれたとき、自分は雲だったらよかったのにとも言っていた。
もしも総司が雲だとしたら。
そう仮定して流は考えを進めていく。
あのとき永倉はなんと言ったか。
「“どれだけ頑張っても、追いつけない存在”……」
もしかしたら永倉は、総司に対して引け目を感じているのではないか?
稽古に参加しなくなったのも、酒に溺れるようになったのも。
すべて総司への劣等感からきているものだとしたら?