花笑ふ、消え惑ふ


前に隊士のひとりから聞いたことがあった。


沖田総司は新撰組随一の才能をもつ天才剣士だ、と。


たしかに稽古をしている総司は周りにいる誰よりも太刀筋がずば抜けて見えた。


剣に関して素人である流でもそう感じるのだから、他の人たちはそれをもっと肌で感じているだろう。


そうして自分の腕に自信をなくし、次第に力を出せなくなっていく。

そんな隊士もなかにはいるのかもしれない。


……永倉もそのひとりであるとしたら。



そこまで考えて、流はふう、と息を吐き出した。

いま考えたことはすべて憶測に過ぎない。


もしかしたら別の理由があるのかもしれないし、そもそも理由なんてないのかもしれない。


結局のところ、流にはどうすることもできないのだ。


だって自分は──────



────……彼らの“仲間”ではないのだから。


< 114 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop