花笑ふ、消え惑ふ


「とにかく今日は休め。邪魔したな」


文机に置いてあった書類をがさりと手に取った土方は部屋を出ていこうとした。




「えっ?邪魔したって……」

「これを取りに来ただけだ。てめぇも俺がいたらおちおち休めねぇだろう」



ひらりと書類を掲げて出ていこうとした土方を……その着流しの裾を、おもわずつかんでしまった。




「そんなことないです。ここは土方さんの、お部屋で…わたしは使わせていただいている身で、」


言いながら、違う、こんなことが言いたいのではない、と流は思い直す。


本当に言いたいことはもっと別にある。土方のことを思ってじゃない。


もっと、もっと自分のことを……





「ここにいてください。……いて、ほしいんです」



言ったあとで、ああ、と納得する。

それが土方を引き留めた本当の理由だったのだ。



ダメ元だった。

きっと断られるだろうと覚悟していた。


だけど土方は……


逡巡することもなく、すとんと腰を落ち着けた。


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