花笑ふ、消え惑ふ
額にひんやりとした手が乗せられる。
土方は流に触れるとき躊躇がない。
思えば、最初からずっとそうだった。
「……怖くないんですか?」
「なにが」
「わたしに触れたら、花になっちゃうんですよ」
「手にだろ。たとえばここで、てめぇのその貧相な乳を掴んだとしても、俺は花にゃ変わらねぇ」
「そのときはわたしが手袋を外して平手打ちするかもしれません」
今日はおかしいと思った。
土方も、自分も。
────胸…というより頭が、ばくばくしてる。
もう寝ろ、と土方の口が動いたような気がした。
発せられたはずなのに声は聞こえなかった。
さっきまで考えていた難しいことが全部、一瞬にして吹き飛んでいった。
どこまでも不思議な人だと流は思う。
怖い人、
感情では動かない人、
鬼の副長と呼ばれている人、
……だけど、たまに優しい人。
────……気持ちいい。
流は考えることをやめて、そっと目を閉じた。