花笑ふ、消え惑ふ
「せり、ざわさん……だいじょうぶですよ」
流はたどたどしく言葉を紡ぎながら、芹沢に笑顔を向けた。
「大丈夫です……安心、してください」
ただ理解できない不安を抱えているであろう芹沢に対して。
いましがた殺されそうになったのにもかかわらず、流は芹沢を励ました。
「お主は何者なのだ」
「……わたしは、」
「いや、……いい。わかっておる」
ゆるりと石段に腰をおろした芹沢は、膝についた手で顔をおおって。
それからゆっくりと面を上げた。
「ながれ」
流がなにを言うまでもなく、芹沢は確信を持っているかのような声色だった。
「お前が、あの“流”なんだろう」
だから流はなにも言わなかった。