花笑ふ、消え惑ふ
ともかくもう謝罪は充分だった、から。
「そういえば永倉さん、なんでここにいるんですか?」
流はさりげなく話題を変えようとしたが、わかりやすく話を終わらせてしまった。
「なんでって……ここ風が当たって気持ちいーし」
「あ、えと、そうじゃなくて……わたしてっきり、皆さん屯所にいないものだと」
そう、今日はみんなして屯所を出払っている。
流はてっきり永倉も同行しているのかと思っていた。いや、同行していたはずだ。
だって今日は……壬生浪士組から新撰組へと変わった祝いとして、宴をすると言っていたから。
「行き先は島原でしたっけ?」
「そだね、島原」
どんなところかすこしだけ気になっていた。
島原の遊女は外出が許されているとは、本当なのだろうか。
火災や病気でない限り門の外に出られない吉原に比べると、ずいぶんな好待遇だと思った。