花笑ふ、消え惑ふ


「遊郭はお嫌いですか?」

「いんや、大好き。女も酒も好きです」


ですよね、と流はうなずく。

同じ幹部で女好きの原田と意気揚々と島原に行くところを、流も目撃したとことがあった。



「俺も一緒に行ってたんだけど、なんか妙に見張られてる気がしてさぁ。便所行くっつって抜け出してきてやった」

「見張られるって、誰にですか?」

「左之」

「えっ原田さん?」


まさか身内の名前が出てくるとは思わず、流はびっくりして目を丸くした。


敵でもなんでもない、同じ仲間である原田に見張られるようなことを永倉はしたのだろうか。


流ははっとした。



「そういえば前に男でもいけるかもって仰ってました……もしかして永倉さんのことがす」

「いや狙われてねーからな?流それ、からかわれただけだから。あいつは女にしか興味ねーよ」


思い違いだったようだ。



「まー正直まだ呑み足りなかったから、ひとりで呑み直そうかと思ってたとこ」



────あれ?


そのとき、ようやく。

先ほどからふわふわと漂っていた違和感の正体に、流はようやっと気がついた。




────永倉さん、無理してる?


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