花笑ふ、消え惑ふ
一陣の風が巻き起こり、ふわりと空気を含んで舞い上がったのは、だんだら模様の羽織。
浅葱と白に染め抜かれた羽織が、強く視界に焼き付いた。
────この浅葱色、知ってる。
いつか吉原にいたときに客から聞いたことがあった。
京には壬生の狼がいる、と。
それは異名である。
上洛した将軍・徳川家茂の護衛のために結成された集団────
「……壬生浪士組」
こうして流は壬生浪お預かりの身となった。
さっさと歩いて行ってしまうふたりの背中の後を追う。
置いていかれないように。
今度こそは、……────ないように。
流は必死で、ふたつの希望を追いかけた。