花笑ふ、消え惑ふ
しんとうむねんりゅう。
それは剣術流派だ。
何度かその名前を聞いたことはあったが、実際に神道無念流の人を見るのは初めてだった。
というのも、ここ新撰組でのおもな流派は、近藤や土方、総司などが学んでいた天然理心流であったからだ。
「昔からハラハラさせてくれる人だった」
もちろん悪い意味でな、と永倉は付け足した。
「下手するといまよりも荒れてたかもしんない。暴力は振るうわ、略奪はするわ、盗みはするわ、もう最悪でさ。短所なんてあげたらキリないけど……」
そこで一旦言葉を切ったのは、そのあとの言葉を本当に言っても言いものか…と。
一瞬でも悩んでしまったからかもしれない。
「……でも、たった一言で人の心をつかむ力があった」
無意識なのだろうが、永倉はそこで自分の胸元をつかんでいた。
そこにある心臓を必死に抑えつけようとするかのように。
くしゃくしゃになった着物。
ぶ厚い拳が小さく震えているように、その声までも揺れている気さえした。
「なんだよ、自分みたいになるなって……
あんたが、……あんたが昔、俺に言ったんだろ。なんで今さらそんなこと言うんだよ……」
言葉がつまっても、永倉は続ける。
言いたいことがたくさんあるのだというように。
流ではなく、遠くにいるその人に訴えかけるように。