花笑ふ、消え惑ふ


その約束が叶うことはなかったのは、彼が死んだからだ。


巡察中、賊と対峙した彼は深手を負わされた。


流がそれを知らされたのは、徹夜の看病もむなしく翌日に息を引き取ったあとだった。



だからもう、それは確かめようがないのだと思っていた。



────……だけど。



あのときの会話は決して無駄ではなかった。


そして大袈裟でもなかった。


この世には、家族よりも深い存在もあるのだと。





血が繋がっていなくても家族になれるのだと。




それを話してくれた今は亡き隊士に、……そして教えてくれた永倉に感謝した。


流はまだここに来て日が浅い。

隊士たちのこともわかっていないことが圧倒的に多い。


それでもひとつだけわかっていること、それは。






永倉にとって────

……芹沢は、家族同然だったということ。


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