花笑ふ、消え惑ふ

「腹が立ってるんだ、ずっと」


永倉が呟く。眉を歪めた。




「もう後悔しても遅いのに、いまさら後悔してる芹沢さんにも」


永倉がさらに呟く。口が不自然に歪む。




「悪いほうへ、悪いほうへ芹沢さんの背中を押した奴らにも」


永倉が続けて呟く。目を伏せる。




「腹が立ってしかたねぇんだよ」


永倉はひときわ苦しそうに呟いたあと、顔をおおって言葉を落とした。






「わかりたくないのに、そうしたくないのに……心の底では思っちまうんだ。────……芹沢さんみたいになってはいけない、って」




引き返さなかった芹沢でも、

誰も咎めなかった周りの人たちでもなく。



永倉はそんな自分に一番腹が立っていたのだ。