花笑ふ、消え惑ふ


語る芹沢の瞳にはいったいなにが映っているのか。


まるでそこに永倉がいるかのように、芹沢は終始正面を向いたままだった。


だけどそこには蜃気楼が揺らめくだけで、人の姿なんて影も形もなかった。




『人一倍、努力をするやつだ。立ち止まったとて、芯の部分は折れちゃおらん。永倉新八はそんなにやわじゃないぞ。そう、酒に溺れても泳いで岸までたどり着くような……ふふ、

────どこまでも愚直な男よ』


愉快そうに笑う芹沢を、流は斜め下からそっとうかがって……そしてはっとした。


流を見つめているときでもこんな瞳はしなかった。



芹沢の決してすっきりしているとはいえない目は。


誰の話をするときよりも、

どんな話をするときよりも。



────慈愛に満ちあふれていた。



いままでに見た芹沢のどんな表情よりも、それは美しいと思った。





すべてを話し終わった流は、芹沢がしていたようにまっすぐ真正面を見つめる。


あのときと違うのは……

目の前にはちゃんと、伝える相手がいることだ。




「芹沢さんは、永倉さんのことをちゃんと評価していました。それだけじゃない。あの人も……芹沢さんも、永倉さんのことを────」




────……家族のように思っていたんですよ。


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