花笑ふ、消え惑ふ
「永倉さん」
震える肩に手をかけようとして、そっと降ろした。
まだ、触れる覚悟がついていなかったのだ。
自分は誰かに気軽に触れていい人間ではない。
「……きっと皆さんには言えないこともあると思います」
それは仲が良くないから?
違う、仲間だから。
固い絆、深い信頼で結ばれた彼らには──彼らだからこそ、ときには言えないこともあるだろう。
「だけど、わたしはよそ者です」
そのとき自分で自分の発した言葉に、なぜかちくりと胸が痛んだ気がした。
理由はわからなかった。痛んだところを押さえたときには、もうなにも起こらなかった。
────花が溜まってきたのかな?
だけどそれとはすこし違うようにも感じ、流は意識を永倉に戻した。
「誰にも言えないまま、なんて。そんなの悲しいです」
それが言葉であっても、花であっても。
自分の中にどんどん溜まっていくそれは、どれだけ溜めたっていいことはない。
何事も、溜めちゃいけないのだ。
言いたいこと、想い、不満、恋心、恨み、悲しさ。
溜めていいものなんて、ひとつもない。