花笑ふ、消え惑ふ
それに気づいた永倉の両手を、なにかが包みこんだ。
それは手袋に包まれた少女の小さな手。
自己防衛反応で一瞬強張った永倉だが、顔をあげ、すぐにすっと肩の力が抜けた。
そして肩の力が抜けたまま、からだを揺らして笑ったのだった。
「……流のほうがずっと泣きそうになってんじゃん」
「ぅ、ごめんなさ、これでも我慢してたんです……」
自分よりも緊張している人を見ると落ち着いてくるという、あれ。
それはきっと涙腺にも当てはまるのだろう。
現に永倉はいまにも泣き出しそうに顔を赤くしている流に、すっと涙が収まっていくのを感じた。
「わたしも、すごく……良くしてもらってて、」
「うん」
「遊んだり、町に連れてってもらったりして」
「……うん」
「もっと、……一緒にいたかったです」
そうだな、と低く掠れた永倉の声が流のなかに浸透する。