花笑ふ、消え惑ふ
ふたりが想っているのは、もうここにはいない人。
遠くへ行ってしまったその人はいまなにをしているだろう、なにを考えているだろう。
家族のこと、友人のこと、自分のこと。
もしかしたらふたりのことなんて、考えてもいないかもしれない。
……それでもいい。
たとえ思われていなくたって、人は思いを馳せることができるのだから。
「俺が気づいてるってこと、誰にも言うなよ?」
「もちろんです。ふたりだけの秘密ですね」
永倉は目を見張って、そして眉を下げて笑った。
「これ美味いなぁ。どこの団子だろ」
「皆さんで食べてくださいって書き置きと一緒に、厨に置かれてたらしいです」
「ふーん」
「どなたかわかりませんが、優しいですよね」
「そんな目で見てもやんないぞ?これはもう俺のだから」
「……バレましたか」