花笑ふ、消え惑ふ
「灯りは?」
「もう休むのでいらないです」
総司の部屋は物が少なく、整然としていた。
それはこいつの性格を表しているようでもあって。
趣味嗜好まみれの俺の部屋とは大違いだと思った。
「休むにしても着替えたり布団敷いたりするんだ。灯りはいるだろ」
「ぼくは夜目も利きますし、油がもったいないのでいりません」
「……クソ頑固」
「そっちがしつこいんですよ。それにお節介だ」
しつこい、お節介。
その言い草にまたしても突っかかりそうになった。
が、ここで反応してしまえば堂々巡りだ。
落ち着け、俺のほうが大人だ。
自分にそう言い聞かせると幾分か落ち着いてきた。
ふぅん、お節介……お節介ね。
それなら最後まで世話焼いてやろうじゃねぇか。
「布団用意してやるから、総司はその間に着替えとけよ」
なにを勝手に、と後ろから飛んでくる声を無視して、押し入れから布団を引っ張り出した。
床には足で蹴散らかさずとも、最初から物は散らばっていなかった。
万年床になんて一度もなったことないんだろうな。