花笑ふ、消え惑ふ
「さ、終わったぜ……ってまだ着替えてないのかよ」
俺なりに丁寧に布団を引き終わり振りかえると、総司はまだ着流し姿のままだった。
呆れながら立ちあがって、すれ違いざまにその肩をぽんと叩く。
「はやく着替えてもう寝ろよ。おやすみ」
「……んで、」
「はい?」
「なんで、なにも訊かないんですか」
鼻につくような濃い血の臭い。
飽きるほどに自らも纏ってきたその臭いに、気づかないわけがなかった。
雨でもかき消せないほどの、血。
俺だって多少は夜目が利く。
たとえ月が隠れていようとも、灯りがなくとも。
……総司の全身が血に濡れていることくらい、最初からわかっていた。
「わかってるんでしょ、あんた。もう、全部、ぼくがなにをしてきたかも──」
「じゃあさ」
遮るようになってしまった声は、広くもない部屋に思いのほか大きく響いた。
「じゃあ、お前の手、触らせてくれよ」