花笑ふ、消え惑ふ
「……は?」
さっと総司の顔色が変わる。
まさかそうくるとは思わなかったんだろう。
「や、そういう意味じゃなくて」
「そういう意味ってなんですか」
「へ、変な意味じゃなくて!」
「変な意味ってなんですか」
完璧に警戒されてしまった。……と、思ったけど。
訝しげな表情を隠すことはなかったが、総司がじりじりとこちらに手を差し出してきた。
いつもこう素直ならいいものを。
「ありが……」
「先に言っておきますけど」
「え、うん」
「ぼくにそっちの気はありませんよ」
「いや俺にもないよ。安心して身を任せろ」
「その言い方がすでに嫌なんですが」
触るならさっさとしてくれ、とでも言いたそうだったので、それに従うべく総司の手に触れた。
元々華奢な骨格なんだろう、俺の手とは造りがだいぶ違う。
……けど。
ぶ厚く、そして固くなった皮膚。
手の丘にはマメがあって、中には潰れているものある。
────ああ、そうか。
ほっそりとした手には不釣り合いなものがそこには存在していた。
────これは、努力してる奴の手だ。
なんでそんなことにも気づかなかったのだろう。
……いや。
気づかないふりをしていていたのか、俺は。