花笑ふ、消え惑ふ




「総司…、大丈夫かい?」

「……外の空気を吸ってきます」


山南さんが気遣わしげに総司の背中を撫でようとしたが、それを振り払った総司はおぼつかない足どりで離れを出ていった。


それを見送った山南さんが、途端、責めるように俺を見てくる。




「……総司を同行させたのは判断を誤ったのでは?」

「なぜそう思う?」


京都守護職──つまり上から正式な達しが来たときには、やっとか、と内心そう思った。


芹沢を討て、と。たったそれだけの達しだった。


その場に総司はいなかったが、あとから俺が同行するように伝えた。するとこの男は俺のことを批判しているのだ。



「なあ、山南さん。なぜそう思う?」


真正面から向き合い、もう一度訊くと、案の定怯んだように睫を震わせる。それでも言わずにはいられないらしい。言い返してくるのは珍しいことだった。



「総司は……、彼に随分よくしてもらってた。だから──」

「それがなんだ?」

「……っ、」

「それが、何なんだ?今回の件とどう関係がある」


山南さんは口を開こうとして、すぐに閉じた。そして結局、何も言えないまま右肩を抱くように俯き、それきりだった。


この男はいつもそうだ。俺となにかと意見が合わないこの男は、いつもなにかを言いたそうにする。だがそれを言えぬまま、こうして押し黙るのだ。


……情けない。


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