花笑ふ、消え惑ふ
「かわいー子。どっちの女?」
「土方さん」
「違う」
すかさず総司が答えると、すぐさま土方が否定した。
「じゃあ俺がもらうかな」
ぱしゃぱしゃと男が水を足ではじく。
大人の男であることには違いない、が。
まるで子供のような振る舞いに童顔なこともあって、流には男の年齢が判断できなかった。
ぼうっとしていた流は、そのうちはっとして頭を下げる。
「流です。ええと、わたしは、その……」
自分のことをどこまで話したらいいのか、と流は言いよどむ。
男は脇に置いてあったとっくりをぐいと呷ってから、先を越すように言った。
「俺はしんぱち。永倉新八。お前さ、あれだろ?」
────人を花に変えちまう、ってやつ。
総司も土方も直接は言わなかったことである。
目の前の男──永倉はすんなりとそれを言ってのけた。