花笑ふ、消え惑ふ
第三章
流の夢
*
「どうしよう……」
流は困っていた。
眉を下げてオロオロしてばかりの流に、とうとう痺れを切らしたのか土方が書き物から顔をあげる。
「何がだ」
「あ、邪魔してごめんなさい……」
「何が、だ?」
そんなことはいいから早く言えといわんばかりの圧。
流は少し迷ったようにもじもじしたあと、ぽつりと呟いた。
「お風呂、に、入りたくて……」
「風呂?入ってくればいい」
「でも、その……」
いつまでも煮え切らない態度でいる流と、徹夜続きで仕事をしていた土方の相性は最悪だ。
周りにいい印象を与えたいと思わないから、無駄に笑顔を見せることはない。
場を和ませようと気遣いをすることもないし、優しい言葉をかけることもしない。
なによりも自分がそれを求めていないから。
だから、他人に対してそれをすることがないのだ。
今もこうして流のほうも見ず、仕事をさばきながら片手間に聞いている。