花笑ふ、消え惑ふ
流はようやく言う決心がついたのか、胸の前でぎゅっと手をにぎった。
「……誰かに見られてる、気がして」
「はあ?」
「お風呂に入ってると、外から視線を感じるんです。それと、数人の男の人の話し声もして」
「……」
「その、たぶん勘違いじゃ、なくて……」
そのとき土方が、はあ、と深く息を吐き出した。
「命知らずもいるもんだな」
「え?」
「お前は俺の姪ってことになってるんだろ」
「あ……」
────そういえば、そうだった。
実際、そうすることで流にちょっかいをかけてくる人たちは減った。
しかしながら、まだこうして懲りずに流に付きまとう者もいる。
だから、流は困っていた。
「誰か見張りをつけろ」
「見張り、ですか?」
首をかしげた流に土方は言う。
「誰でもいい。ただし、幹部以上の者にしろ」