花笑ふ、消え惑ふ
「流ちゃんもそう思うでしょ?」
金嗣が懸命に話しかけていたのはどうやら流ちゃんだったらしい。
そういえば、気の抜けたような相づちがたまに聞こえてたな。
どこまでもはっきりしない子だ。
それよりも早くどこかに行ってほしい。
さすがに渦中のぼくが横切るわけにもいかないし、蔵へ行くにはそこを通らなくちゃいけなかった。
いや、もういい。
こんなこと、いちいち気にしてちゃいられない。
あきらめて通り抜けようとしたときだった。
「それって、なにか悪いことなんでしょうか」
「は?」
金嗣がぽかんとしたような声をあげる。
ぼくも思わず足を止めた。
「えっとっ、えと、ほら、楽しみ方って人それぞれですよねっ?わたしだって人には言えないような夢がありますし、もしかしたら金嗣さんも、なにか隠してることがあったりして?」
「なっ、俺は……!」
「あ、いまのは言葉の綾のつもりで……気を悪くさせたならごめんなさい。金嗣さんの中の総司さんを否定するつもりはありません、が、今度はわたしの中にいる総司さんについてもお話していいですか?」