花笑ふ、消え惑ふ


なに言ってんだ。

何を言ってるんだ、あの娘は。


金嗣も同じように固まっている。




「えっとですね、わたしの思う総司さんはー……まず、花より団子です!みつ美屋の草団子がとっても美味しいらしくて、時間とお金があれば通い詰めてるんですって」

「は、」

「それと近所の子どもたちにも総司さんは人気ですね。よく一緒に遊んでいるのをお見かけします。お稽古も、たしかに厳しいですが褒めるときはちゃんと褒めてくれてますよねっ」


たまに稽古を見学するようになった流ちゃんは、道場にいるのが誰であっても顔を出す。

ぼくのことを苦手に思っているだろうに、それでも一言断って道場の端に腰をおろすんだ。

端から見たらぼけーっとしてるようにしか見えなかったけど、存外、ちゃんと見学していたらしい。




「いや、でも、それにしたって贔屓されすぎ……」

「うーん……贔屓というより、妥当に評価されてるだけなんじゃないかと、わたしは」

「っ……」


「それと、総司さんはそんなに楽しくないと思いますよ」

「なにが」

「人を斬ること、です」


「なんで流ちゃんにそんなことわかんの。人を斬ったこともないくせに」


自分に意見されたのが気にくわなかったのか、その声色は随分とピリついていた。


あくまでも流ちゃんが話したのは彼女の中のぼくのことであって、金嗣の中のぼくのことではないのに……いやそれも意味がわからないけど。

ともかく、けんか腰に返されたその言葉に。


そうだとも違うとも、
流ちゃんがなにかを返すことはなかった。


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