花笑ふ、消え惑ふ
時の流れは皆に平等におとずれる。だけど流は自分の時間の経過はひどく早く感じられた。
毎日、同じことの繰り返し。客をもてなし、ときには欲の相手をして1日が終わる。
必死にこなしている間は、時間の流れなんかあらためて感じることはなかった。
いまこうして考えられているのは、あの縛られた場所から解放されたからである。
「そうか」
土方はぶっきらぼうにそれだけ言って流に近寄ってきた。
焦点をどこに合わせば良いのかわからなくなるほど、近くに。
流はびくりと身体を揺らす。嫌なことをされるのかと思い、とっさに身体をこわらばせた。
……が。
あっと思ったときには肩をものすごい力で押しつけられて。
「きゃっ」
部屋の真ん中で突っ立っていた流を、いとも簡単に座らせてしまった。少々、いやかなり強引な手ではあったが。
「15はもうガキじゃない。ひとりで寝ろ」
「うぅ……」
「うるんだ目で見つめても無駄だ。もっとも、」
土方はそこで言葉を切る。
つい勢いで言ってしまった、という感じだった。
おそらく普段から感情的になってものを言う人ではないんだろう、と流は思う。