花笑ふ、消え惑ふ
「もっと動揺してもいいはずなのに」
「元々感情の起伏が少ないんだろう」
「ぼくにはそうは見えませんでしたが」
「お前だって人を斬っても動揺しない」
「っ、それはっ!……そうですけど、でも」
ぐっと言葉につまった総司は、それでもまだ引っかかるようだった。
向けられた視線は、なぜあんなことをしたのかと責めるようでもある。
自分の知ってる土方歳三がすることじゃない、と言外に含んでいるようでもあった。
「……まだほんのガキだ。そこまで考えちゃいねぇよ」
「15はガキじゃないんでしょう」
「どこまでも聞き耳立てやがって」
「明日、みんなの前でなにを言うつもりですか」
「さあな」
「そうやって……いつもあなたは、大切なことをはぐらかす」
「今日はもう疲れただろう。お前もとっとと休め」
これ以上ここで話し合いを続けても、堂々巡りにしかならない。
総司もそれをわかって、肩をすくめたあと今度こそ部屋に戻っていった。
「あの娘には気をつけたほうがいい」
俺に対し、警告とも取れる言葉を残して。