花笑ふ、消え惑ふ
「お、おば、お化け……!」
流はそういう類いのものにめっぽう弱かった。
意識せずとも瞳から涙が生産され、ぼろぼろと落ちていく。
まさか泣かれるとは思ってなかったんだろう、男が「なはは、予想以上の反応」とちょっと困ったように呟きながら(これも口がないのにどうやって?と流は不思議でならない)すっと手を伸ばしてきた。
びくっと身体を縮こませる。
「ひっ!土方さん!土方さん!土方さんっ!」
「おーおー怒濤の副長連呼。ちょっとここ……そう、端のほう。引っぱってみ?」
手首をつかまれ、男の顔のところまで持っていかれる。従わないと呪われそうで、言われたとおりに顔の端を引っぱってみた。もちろんこれも泣きべそをかきながら。
────ピリ、……ピリピリッ
皮膚が裂けるような音がして、いとも簡単にぴりぴりと裂けていく。まるで仮面が剥がれるかのようだった。
そうして肌の下からまた現れた色白の肌に、流は唖然とするしかなくて。
「じゃーん。ど?いきなり色男が現れてびっくりした?」
「っ、……っ!」