花笑ふ、消え惑ふ
そのうちたどり着いたのはひとつの部屋だった。
ふすまの枚数からも、どうやら大部屋らしいことがわかる。
「斉藤です。連れてきました」
「入れ」
中からかかった声に、男──斉藤が静かにふすまを押し開けた。
斉藤の背中の後ろから流は顔をのぞかせる。
そこに広がっていたのは、やはりひらけた空間で。部屋の中央に鎮座していた6つの顔がじっとこちらを見つめていた。
……いや、1つはいまにも寝落ちしそうに舟をこいでいたが。
土方、総司、永倉など中には知った顔もあった。
「ふうん、逃げなかったんだ」
「思ってたより大人びてるな。ほんとに15か?」
「大人しそうなのに、あんな惨い事件を……」
最初の言葉は総司が放ったものだった。
てっきり夜のうちに逃げ出すと思っていたらしい。