花笑ふ、消え惑ふ
土方は近藤をちらりと一瞥する。
それ以上のことは近藤の口から言わせようとしているらしい。
それまで若干、蚊帳の外気味だった近藤にようやく発言権が戻ってきた。
「総司、すこし落ち着きなさい。いまその子を責めたってなにも始まらない」
「……わかってます」
まるで親に怒られた子供のように。
総司は最後に流をひと睨みして、むすりと口を結んだ。
これには流石にわからざるを得なかった。
────わたし、たぶん、総司さんに嫌われちゃってる。
知らないうちに、なにか気に障ることをしてしまったのか。どれだけ考えても思い当たる節がなく、流はひそかに落ち込んだ。
人から嫌われるのは、あまり好きではなかったから。
「さて。気を取り直して本題に入るが……ながれ、覚悟はできているかい?」
「……はい」
流の処遇についてだろう。昨日、土方は流のことを『保護する』と言ってくれた。
だけどここの大将は土方ではなく、近藤。近藤が殺すと言えば、流はきっと殺される。
それ以前に、土方が昨日言ったことに後悔して考えを変えた可能性だってある。
────山崎さんはああ言ったけど……
流は不安をむりやり鎮めるように胸を押さえた。
そうして近藤は──
「うん、よかった」
と、にっこり笑ったのだった。