花笑ふ、消え惑ふ
「やっぱりここは男所帯だからな。きみも男として振る舞うほうが安心だろう」
「、え?」
予想だにしていなかった言葉に流は目をぱちくりさせる。
「えっと、あの、覚悟っていうのは……」
「ん?男になる覚悟だが」
当たり前のことを言うように近藤は言ってのけた。
それ以外になにがあるのだ、と顔にでかでかと書いてあった。
「あいにくここは女人禁制でね。恥ずかしい限りだが、隊士たちはみな女に飢えているんだ」
「にょにん、きんせい……女に、飢えてる」
流は復唱するように呟いたあと、それまで張っていた肩をふっと落とした。
「殺されるんじゃ、なかったんだ……」
「てめぇはそちらをご所望か?」
いち早く反応したのは土方だった。
その瞳は氷のように冷たく、ここで流が殺されるとわかっても動揺ひとつしなさそうだった──が。