花笑ふ、消え惑ふ
「生きたいっつったのは誰だ。あのときの言葉が嘘なら、それこそてめぇの命はねーよ」
「……!」
土方は覚えていてくれたのだ。昨日、流が言ったことを。
『だったら大丈夫だと思うよ。あの人、だいぶ人間やめてるけど、自分の信念はちゃんと持ってるから』
朝の言葉がようやく、流の胸にすうっと染みこんでいく。
そういうことだったんだ。
流はなんだか泣きそうになって、それを誤魔化すように言葉をつむいだ。
嘘じゃありません、と。
訴えかけるような口調になってしまったかもしれない。
涙のまじった声色になってしまったかもしれない。
土方はそんな流を見て、「…当たり前だ」と呟いたあと腕を組み替えた。
「ながれ」
近藤の、流を呼ぶ声はどこか柔らかかった。まるで一文字一文字を柔らかい布でくるまれるような……そんな、あたたかさがあった。
「はい」
「本来きみは……即刻処罰の対象だ。上からそう命じられていた」
流はぐっと唇を噛んで、悲しそうにうなずく。
「だが、私としてもそれは心苦しかった。今朝、トシからきみを保護したいと叩き起こされたとき、正直驚いたが、私もそれに賛成したいと思ったよ」
近藤はおおらかに笑ったあと、場を見渡すように首を動かした。
「と、いうわけで!いつも事後報告になってすまないが、みんなはそれでいいだろうか?」