花笑ふ、消え惑ふ
『サノっち、そこまでにしときな。ナガレちゃん完璧に怯えちゃってるし、それ以上変に触るのはサノっちのためにもならないよ』
流を原田から救出してくれたのは、顔も声もはじめて見聞きするのに、なぜか会ったことあるような不思議な男だった。
ようやく救出されてもなお呆然としている流をさすがに哀れに思ったらしい、総司が興奮する隊士たちを(騒動の元凶であるにもかかわらず、のんびり湯船に浸かっていた原田も)人払いしてくれて、ひとりきりにしてくれた。
『まあ、……ゆっくりしなよ。これからのことはまた上がってからで大丈夫だからさ』
嵐が過ぎ去ったあとのように。
しばらく魂が抜けたようにぼうっとしていた流は、ふと我に返ったあと、冷えた身体を温めるようにようやく身体にお湯をかけた。