花笑ふ、消え惑ふ
「流ちゃんの席はここ」
「あ、ありがとうございます……気を遣っていただいて」
「末席だから呼んだだけだよ。なにを勘違いしてるの」
ぼく、そんないい人じゃないから──わかってると思うけど。
総司は平坦な声で言い放ったあと、運ばれてきた朝餉に手をつけた。
そうして話はまたしても流のことになった。
近藤は、今度は女中として住むのはどうかと提案してくれた。
女中、つまり雑用係のことだ。
ここは女人禁制ではあるが、料理や掃除のために出入りしている女は数人いるという。
流はその、常駐の女中になってはどうか、と言われた。
「やります。やらせてください!」
流はそれをふたつ返事で了承した。元々、流に選択肢などない。
幸いにも掃除は得意だった。……掃除は。