花笑ふ、消え惑ふ
その音は総司にも聞こえていたのか、呆れたように箸を置いて。
「土方さん!」
すでに食べ終え、無言で茶を飲んでいた土方を呼んだ。
「……なんだ」
「言ってやってくださいよ」
「なにを」
「流ちゃんに、よしって」
「はあ?」
「そうでもしないとこの子、食べないですよ」
「好きにさせたらいーだろ」
「だめです。あなたが拾ってきたんですから、ちゃんと面倒見てください」
「なんで俺がそんなこと……」
反論しようと片眉をつり上げた土方と、目が合った。
そのまま数秒────……
「……よし」
「へ?」
「食えっつってんだ。さっさと食え、面倒くせぇ」
ちっ、と心底鬱陶しそうに舌を打たれる。
近藤がなにやら土方を咎めるような声を遠くに聞きながら、流はまだかろうじて湯気の上るお膳をじっと見つめた。
そうして……そっと手を合わせる。
まるで、誰にもバレないように。小さく、小さく「いただきます」と言って、お箸を手に取るその姿を。
その場にいた全員がさりげなく見つめて(一部はニコニコと見守って)いたことを流は知らず。
芋の甘煮に舌鼓を打って、にこりと花が咲くようなほほ笑みを浮かべたのだった。