花笑ふ、消え惑ふ
居場所
その日の夜、流は土方の部屋にいた。
女がいると知れ渡った以上、ひとり部屋はさすがに危険だと。
近藤が『だれかと相部屋になるように』と言いつけた結果だった。
みんな、流に微笑みかけてはくれなかった。
厄介な能力をもっている流と、だれが一緒に寝てくれるというのだろう。
屯所に歓迎するのと、これから毎晩同じ部屋で共にすることは全くちがう。
流はあくまでも部外者であり、罪人なのだ。なにをしでかすかわからない危険人物だと思っている人もきっと中にはいる。
流からはなにも言えず、ただじっと畳を見つめていたときだった。
『……夜泣きでもしたら蹴り出すからな』
助け船を出してくれたのは、
────……やっぱり土方だった。
ほっとしたのはなにも他の人たちだけじゃない。
流も胸をなで下ろしたのと同時。
なんだかよくわからないあたたかさが、身体のなかに流れ込んだような気がした。