花笑ふ、消え惑ふ
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「おら、てめぇ念願のふたり部屋だ」
「土方さんは怖くないんですか?」
「なにが」
「わたしのこと、怖くないんですか?」
流はしずかに土方を見あげた。
きのう流がいたところよりもずっと、物に溢れている部屋で。
「怖い?はは……俺も舐められたもんだな」
土方は端正な顔に微笑をはりつけ、流に背を向けた。
部屋の奥には書類が山積した文机がある。
そこの前に座った土方は、なにやら書き物をはじめた。
────わたしはどうしたらいいんだろう。
入り口に突っ立ったままの流は、どう動いたらいいかわからず立ち尽くした。
たしかにひとりで寝るのが嫌だと言ったのは流だ。
だけどいざ、こうしてふたり部屋になったらなったで……
そこで流は、床になにも敷かれていないことに気づいた。
ぎりぎり二組分、布団が敷けるぐらいの隙間。