花笑ふ、消え惑ふ
「とにかく、相当お怒りみたいだよ。酷だよね。きみの生死はもはやどうでもいいらしい」
「……ごめんなさい」
本当にそう思っているのか、口先だけか。
俯く彼女の表情からはなにも読み取れなかった。
その姿に、なぜか余計なことを言いたくなる。
「ごめんで済むならぼくたちは要らないんだよね」
……それに、
「やるからにはもう少し、計画的にやったらよかったのに」
吉原でのことも。いま、ここで起こしたことも。
わざわざぼくたちの前で、花に変えなければ。
それさえなければ、きみが“流”だと気づくこともなかった。
「……少し喋りすぎたね」
こほ、と乾いた咳をして腰にある刀の存在を確かめた。
はやく終わらせて帰ろう。
鯉口をきってすらりと刀を抜く。
その長い刀身に罪人の青ざめた顔が映った、そのときだった。
「──────総司、待て」