花笑ふ、消え惑ふ
苦しさを抱えて
「っっ!」
目を覚ました流はいきおい任せに身を起こす。
すぐに、喉の奥からせりあがってくるものを感じた。
耐えきれなくなって、口元を押さえるよりはやく咳きこんでしまう。
「けほっ……ごほ、ごほっ」
口をおおっていた手のひらに、なにかが押しつけられる感触がした。
流の身体が一気にこわばる。
────溜まりはじめた。
ひらいた手のひらから一輪の花が、布団の上に落ちる。
それを見るやいなや、流は廊下へと出ていった。
同じ部屋で寝ているはずの土方を気にする余裕はなかった。
「っ、ぅ……」
また、咳きこむ。
苦しい。
それだけが流の頭を支配する。
何度も経験したこと。
道中、見られて、言われたこと。
『ひっ…この女、やべぇぞ……化け物だ!!』
────目と口から、花を流してやがる。