花笑ふ、消え惑ふ


そんな流を見て、近藤はあわてて正式に流のことを紹介した。




『この子は流。数日前から女中として働いてもらうことになった────トシの姪っ子だ!』

『は?』


近くでそれを聞いていた土方と、顔を伏せて指を弄ばせていた総司の声が重なった。



そのときは衝撃を受けていた隊士たちだが、流が土方の部屋に頻繁に出入りしていることも知っており、みんなはすぐにその話を信じた。


そうして後日、ちょっかいをかけてきていた隊士たちに平謝りされ。


数々の無礼を許してほしい、どうか副長には言わないでほしい、と。

まるでこの世の終わりのような顔で懇願されるので、流も気圧されるようにこくこくと頷いた。


それが、つい数日前の話。


いまでは流を口説こうとする者はひとりもいなくなった。

それが"副長"の姪だからか、"土方"の姪だからか。流はその真相をまだ知らない。


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