花笑ふ、消え惑ふ
朝餉のときは、とくにこれといって落ち込んだ様子も見せていなかった。
だが、こうして刺々しい口調になっているのは、きっと相手が流であるせいだけじゃない。
「あの、沖田組長……さすがにすこし言い過ぎなのでは」
総司の近くにいた隊士が、おずおずといった感じで口をはさむ。
それを見ていた他の隊士たちも控えめに声をあげた。
「そうですよ。いつも女子供にやさしい組長らしくありません」
「流ちゃんが可哀想です。もうすこし優しくしてあげましょう」
隊士たちにやいのやいの言われても総司は痛くも痒くもないらしい。
流をあしらうようにひらりと手を振ったあと、こう続けた。
「ただでさえ人が足りてないってのに、子守なんてできるわけがない」
言われてみれば、この人数相手に総司だけというのはすこしばかり大変そうだった。
「ほかに師範はいないんですか?」
「この時間は、沖田組長と永倉組長が稽古をつけてくださっているよ」
「でも永倉組長、ここのところずっと道場に顔を出していなくて……」
「きっと今日もいつもの場所で飲まれているはずだ」