花笑ふ、消え惑ふ
「ごめんなさい」と小さな声で謝ると、永倉は流の頭をわしゃわしゃと撫でくり回した。
「やっぱ謝り癖、あるよなぁ」
「へ」
「冗談だって話。俺のためにこれ、退かそうとしてくれたんだろ」
これ、と言ったお猪口の酒を、永倉はまた体内に流しこんだ。
どうやら酒を飲む手を止めるつもりはないらしい。
流はそんな様子を心配に思いながらも口をひらいた。
「よかった。ちょうど永倉さんのことを探していたんです」
「えー俺のこと?なん、もしかして告白とか?流おまえ見る目あるぜ、なはは」
「お稽古、参加されないんですか?」
流がそう言った瞬間、それまで笑っていた永倉の顔に影が落ちたような気がした。
「……なんで?」
まるで一瞬にして酒が抜けたように、瞳に冷たいものが宿っている。
それでも表面上は笑っているようにみせるのは相手がまだほんの小娘だからだろうか。
「総司がなんか言ってた?」
「いえ!総司さんはなにも……ただ、大変そうでした」