花笑ふ、消え惑ふ





「──────新撰組(しんせんぐみ)、ですよね。たしか」



「そうそう、新撰組。まだ慣れねーんだよ。俺は前のが良かったと思うんだけど」

「それはどうしてですか?」

「ほら、俺たちは寄せ集めの集団なわけじゃん?町民とか農民ばっかで、武士なんかほぼいねーわけ」


……まあ総司は武家の出身だったけどさ、と永倉は付け加えた。



「思えばあいつ、昔っから小綺麗だったよなぁ。女だと思ってたもん、最初。そう思って話しかけたらさ、『ぼくは男だ!』って泣きながら殴りかかってきてさぁ」


昔を思い出すように宙を仰いだ永倉は、ふと現実に戻ってきたように淡く笑った。


それはまるで、自分だけ過去に取り残されてしまったかのような。

そんな儚げな目つきを永倉がしたから、流はなにも言うことができなかった。




「……変わったのは名前だけじゃねぇ。近藤さんも、総司も変わった。けど俺だけが変われない」


上半身を起こしていた永倉がふいに後ろに倒れこんだ。


< 86 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop