花笑ふ、消え惑ふ
「──────新撰組、ですよね。たしか」
「そうそう、新撰組。まだ慣れねーんだよ。俺は前のが良かったと思うんだけど」
「それはどうしてですか?」
「ほら、俺たちは寄せ集めの集団なわけじゃん?町民とか農民ばっかで、武士なんかほぼいねーわけ」
……まあ総司は武家の出身だったけどさ、と永倉は付け加えた。
「思えばあいつ、昔っから小綺麗だったよなぁ。女だと思ってたもん、最初。そう思って話しかけたらさ、『ぼくは男だ!』って泣きながら殴りかかってきてさぁ」
昔を思い出すように宙を仰いだ永倉は、ふと現実に戻ってきたように淡く笑った。
それはまるで、自分だけ過去に取り残されてしまったかのような。
そんな儚げな目つきを永倉がしたから、流はなにも言うことができなかった。
「……変わったのは名前だけじゃねぇ。近藤さんも、総司も変わった。けど俺だけが変われない」
上半身を起こしていた永倉がふいに後ろに倒れこんだ。