花笑ふ、消え惑ふ
────なにが、永倉さんの重しになっているんだろう。
そのうち買い出しから帰ってきたお千津と夕餉の支度をしながらひた考える。
きっと、飲んだくれになるまでになにかがあったはずなのだ。
それもたぶん、総司と。
だけどそのなにかがわからなくて、けれどもそれ以上本人には踏み込めなくて。
流のことを嫌っている総司に尋ねるなんて、もってのほかだった。
流が手伝ったということで夕餉の品質を警戒する隊士たちの背中を、激励するように永倉が叩いて回っている。
『まずいまずいと思ってるからまずくなんだ。なんでも、ようは気持ちなんだよ。うまいと思いながら食ったら、たとえどんなにまずかろうとちょっとはうまくなるもんだぜ。……たぶんな!』
ニコニコしながら話す内容は若干失礼だったが、それでもさきほどの影を潜めていた表情とはほど遠く。
流は永倉の言うように美味しい美味しいと心のなかで念じながら、自らが炊いた米を咀嚼した。
芹沢鴨が新撰組の屯所を訪れたのは、それから数日後のことである。